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約束を4時間も過ぎた雪の夜の駅。うつむく彼女の姿とストーブの懐かしい匂いに胸の奥から熱い感情が込みあげる/小説 秒速5センチメートル④

2022年9月3日

  • 映画最新作『すずめの戸締まり』に注目が集まる新海誠監督。22年11月の公開に先立ち、2007年公開作『秒速5センチメートル』を、新海誠みずからが繊細な筆致で小説化した『小説 秒速5センチメートル』をお届けします。本連載では連作小説の第一話「桜花抄」を全4回でご紹介。今回は第4回です。「桜の花びらの落ちるスピードだよ。秒速5センチメートル」いつも大切なことを教えてくれた明里、そんな彼女を守ろうとした貴樹。小学校で出会い、かけがえのない存在となったふたりだが、東京から栃木、鹿児島へとふたりの距離は離れてしまう――。それぞれの恋心と魂の彷徨を描く、儚く切ない物語。映画版では語られなかった彼らの心理描写も盛り込んだ、珠玉の三連作短編集。ページをめくると、言葉だけで紡がれた美しい“新海ワールド”が広がります。明里の待つ岩舟駅までは電車を乗り継ぎ、片道3時間ほどで到着できる予定だった。しかし、降り続く雪で電車はじりじりと遅れていく…。

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