ダ・ヴィンチWeb - ワラウ

まだ冷気を含む5月の雨の朝。こんな日に地下鉄になんか乗れっこない――孝雄は高校とは反対方向に歩き出す/小説 言の葉の庭①

2022年9月14日

  • 映画最新作『すずめの戸締まり』の11月公開を控え、過去作品に改めて注目が集まる新海誠監督。2013年に発表し「映像文学」とも呼ばれる映画『言の葉の庭』を、監督自身が小説化した『小説 言の葉の庭』を全4回連載で第二話までご紹介します。今回は第1回です。雨の朝の公園で、高校生の孝雄と、謎めいた年上の女性・雪野が出会う。約束はなくても、“雨が降る朝”はいつもの場所で会うようになり、ふたりは静かに、ゆっくりと心を通わせていく…。小説版では、主人公のまわりの登場人物たちのストーリーも描き、重層的に物語が進んでいきます。活字から映像が浮かんでくるような「小説家・新海誠」の世界をお届けします。秋月孝雄は、朝の満員電車に乗るようになって2カ月。混み合う車内の不快さに、苛立ちを募らせる日々を送っていた。


    小説 言の葉の庭
    『小説 言の葉の庭』 (新海誠/KADOKAWA)

     こういうことを、高校に入るまで俺は知らなかった──と秋月孝雄(あきづきたかお)は思う。

    続きを読む