巨大あんこうの口の中はまるで天国!? 「スパあんこうの胃袋」が頑張りすぎた人々の心をじんわりほぐす【書評】
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仕事や家事を頑張る人、誰かに気遣いばかりしている人にぜひ読んでもらいたい作品が『スパあんこうの胃袋』(あきばさやか/KADOKAWA)だ。
心優しく頑張り屋さんゆえ、ちょっぴり疲れてしまった…そんな人々が登場する8つのオムニバスストーリーが楽しめる。本作は、日々を頑張る人たちにたくさんの善意とあたたかいエールを送ってくれる。
「スパあんこうの胃袋」は、やりたいことがなんでも叶う夢のような場所。温泉にエステ、ネイルサロンなどの癒し空間が充実。お悩み相談コーナーでは日頃のストレスも解消できる。
読みたかった本に新旧のゲームソフト、さまざまな料理など、欲しいものが勢揃い。さらには訪れる人の趣味嗜好によって内容が変化する。これら全てが無料という、いたれりつくせりの空間だ。
こんな天国のような空間には、一体どんな人たちが招かれるのだろうか。そしてここは何を目的にした場所なのだろうか。
やってくるのは、自分のことは後回しなお人好しの女性、育児に疲れたママ、仕事を頑張りすぎるOL、心無い言葉に傷つく配信者、好きなことや気遣いを「男らしさ」で否定されてしまう男性…背景も性別もさまざまな人たち。しかし彼らには共通点がある。優しすぎたり頑張りすぎたりするがゆえに、自分のことまでうまく手をかけられない人たちなのだ。
そんな彼らも「スパあんこうの胃袋」では、周りを気にせず、やりたかったことや好きなことにだけ向き合える。自分のためだけの時間を過ごすことで、自分らしさに気がつき、ちょっぴり前向きな気持ちで日常に戻っていくのだ。
そんな彼らの姿を見ると、セルフケアの大切さを痛感する。頑張った分、誰かのために優しくした分、自分にも手をかけてみたくなる。
物語の後半では、スパで働く深海魚たちの様子を通して「スパあんこうの胃袋」の使命が明らかになる。優しさの連鎖についても描かれており、人間関係にちょっぴり疲れた人の心をじんわりと癒してくれるだろう。
今日も一生懸命頑張るあなたを、「スパあんこうの胃袋」がきっとどこかで待っている。
文=ネゴト / fumi
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