俳優・戸塚純貴と作家・くどうれいんがタッグを組んだ『登場人物未満』。15枚の写真から連想された、15のショートストーリー【書評】
![](https://news.walkerplus.com/article/1240782/14030213_615.jpg)
-
2024年の朝ドラ『虎に翼』で轟太一役を演じ、「#俺たちの轟」としてSNSをにぎわせた戸塚純貴さんは、演技が「うまい」というよりも、役に「為る」ことができる人だ。それは2023年に春日俊彰になりきったことで話題を呼んだ『だが、情熱はある』に始まったことではなく、「自分だけは見つけている」と何年も注目し続けていた視聴者は少なくないだろう。そんな、戸塚さんを撮影した1枚の写真をもとに、戸塚さんと同郷の作家・くどうれいんさんがショートストーリーを書きおろす――雑誌『ダ・ヴィンチ』で連載していた企画がついに書籍化された。その名も『登場人物未満』(戸塚純貴:モデル、くどうれいん:文/KADOKAWA)。
高校時代、階段の踊り場でたまたま声をかけてきた、ちょっと変わった先輩。毎週月曜日に決まって自撮り写真をSNSに投稿する「月曜日の男」。今でも幸せな記憶ばかりがよみがえる、結婚すると心から信じていたかつての恋人。わかりやすい励ましはないけど、一緒にいると自然と笑顔が戻ってきてしまう、腐れ縁の友達。寄り添うような優しい声を聴くだけでテンションがあがるラジオパーソナリティ。「その1枚から、そういう発想をするのか!」と驚かされるくどうさんの引き出しの多さと、短いなかにぎゅっと詰まった、どこか懐かしさを喚起させられる情景(そんな情景を見たことなんてないはずなのに、なぜか知ってる! と思ってしまう)。いいなあ、としみじみしながらもう一度写真を見返すと、物語が映し出されてまた見え方が変わる。そして改めて、どの写真も違う顔をしている戸塚さんに驚かされるのだ。