ダ・ヴィンチWeb - ワラウ

「自分の子に“社会の役に立たないと愛してあげない”と教育するの?」自分の価値を否定していた私を救った同僚の言葉【書評】

  • 日本人は、自分のことを自分で肯定するのが苦手な人が多いという。『耳かき専門店で働いて自己否定“沼”から抜け出す話』の著者・森民つかさ氏もそのひとりだ。要領よくできないことや、漫画家になるという夢に向かってはいるが思うような結果がでないことで、自己否定の沼にどっぷり浸かってしまっていた。本作は、そんな彼女が耳かき専門店で実際に働いた経験から描かれたコミックエッセイだ。


    森民氏が働く耳かき専門店は、耳掃除や耳つぼを主に、頭や肩、手のマッサージも行うリラクゼーションの店である。途中で寝てしまうほどの気持ちよさを提供するその店には、毎日多くの客が来店する。その来店客との話や、同じ店舗で働くスタッフ間でのやりとりが、森民氏を自己否定沼からすくい上げていくのだ。


    実際にこの漫画から、多くの気付きをもらった。なかでも、人気ナンバーワンのひいらぎさんの話が心に響く。「社会や他人にとって都合のいいだけの機械になるな。あんたは自分の子供に『社会の役に立たないと愛してあげないから』と教育するのか…?」と言われるシーンがある。特に、森民氏の自己否定の主な原因は「自分の存在価値」であった。何をしてもうまくいかないと感じることで、自分は価値のない人間なのではないかという思いが長年彼女を苦しめていたのだ。

    このシーンでは、森民氏が涙を流している描写がある。他人の顔色をうかがってしまったり、同じように自分の存在価値で悩んだりする人も少なくないのではないだろうか。筆者もまた、自分を幸せにできるのは自分しかいないのだなと心打たれた。


    他にも、さまざまな悩みを持つ客が来店し森民氏に打ち明けていく。話すことでスッキリする人もいれば、森民氏のあたたかい受容の言葉に癒される人もいる。数々のエピソードや言葉に、涙する人もいるのではないだろうか。自己否定に悩む人も、そうでない人も、この作品が心の負担を軽くしてくれるきっかけになるかもしれない。


    文=ネゴト / 森ソタカ

  • スタンプを獲得するには、一度 ワラウ を経由してください

    記事一覧に戻る