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「町の人みんなにお知らせしたい」新しい光るクツを自慢したい子ども。日々の幸せと葛藤をリアルに描いた家族コミックエッセイ【書評】

  • “子どもたちのママ”としての在り方。ひとりの女性として、また社会人としての立場。その狭間で揺れながら日々、ひそかに葛藤している女性はじつに多いだろう。そんな“働くママ”の暮らしをテーマとした『いってらっしゃいのその後で』『いってらっしゃいのその後で 転がり続ける毎日編』(ツルリンゴスター/KADOKAWA)は、Xで人気の作家・ツルリンゴスターさんが描く家族の物語だ。


    本書では、長男、次男、長女の3人の子どもを育てる著者自身の日常が、優しいタッチでリアリティ豊かに描かれる。子どもたちと並んで眺めた綺麗な満月。定期的にやってくる育児の孤独感。光るクツに大喜びの次男のこと。妹を勝たせてあげたいお兄ちゃんの話。


    子どもたちと過ごすほっこりとした日常シーンとは打って変わって、母親としてのふるまいにふと自信をなくす瞬間もあるのが現実だ。自分自身との向き合い方、心身のバランスの整え方。一歩、また一歩と慎重に歩みを進める著者の在り方には、計り知れない努力と忍耐、そして家族への深い愛情が垣間見える。

    幸せな瞬間も、苦しい瞬間も、どちらも平等に過ぎていく。だからこそ、その一つひとつを大切に噛みしめながら、「こうあるべき」という固定観念に縛られず自分らしく生きていくことが大切なのだ。


    すべての瞬間を冷静な目で見つめ、時には悩みながら、揺らぎながらも懸命に日々を乗り越える著者の姿に学ぶことは多いだろう。さらに、引っ越しを機に会社員を辞め、専業マンガ家に転身した著者の新たな生活が描かれる続編も必見だ。


    家事、育児、仕事と日々追われる親の大変さは、実際にその立場にならなければ理解しきれないもの。ぜひ本書を手に取り、迷いながらも前を向いて生きるヒントを見つけてほしい。著者と同じような葛藤を抱える人はもちろん、これから子育てをする予定のある人にもぜひ読んでほしい作品だ。


    文=ネゴト / 糸野旬

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