婚約破棄で思わずバンザイ! 自由を求める令嬢が主人公の、逃げて追われて始まる痛快ラブコメ【書評】

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『妃教育から逃げたい私』(菅田うり:漫画、沢野いずみ:原作、夢咲ミル:キャラクター原案/主婦と生活社)は、新しい恋愛物語を求める方におすすめしたいラブコメディ。テンポの良いストーリーと斬新な展開が魅力の作品である。
物語は、王子クラークの婚約者・レティシアが舞踏会の場で「婚約破棄」の兆しを察する場面から幕を開ける。クラークの隣にいるのは自分ではない令嬢。破滅フラグの予感に、読者は思わず固唾を飲んでしまう。だが、レティシアがとったのはまさかのバンザイポーズ!
従来の堅苦しい妃教育や格式張った宮廷生活に辟易していたレティシアは、婚約破棄を“自由への解放”と捉える奔放な令嬢だ。悲しむどころか喜びを爆発させる彼女の姿は、これまでの令嬢もののヒロイン像を覆し、物語全体に軽快なテンポと爽快感をもたらしている。型破りで自由気ままな彼女の行動は読者を飽きさせず、先の読めない展開が続いていく。
婚約破棄を喜ぶヒロインという斬新なスタートは、強烈な魅力だ。一方で、ラブコメとしての王道の甘さあり、笑いあり、胸キュンありの展開が読者を惹きつける。
物語を彩るのは、王子クラークの存在だ。舞踏会で別の令嬢を伴い「婚約破棄」という王道展開を演出したかに見える彼だが、その後の行動は意外性に満ちている。自由を謳歌し始めたレティシアのもとに押しかけ、彼女を部屋に閉じ込めるという大胆な行動に出るのだ。
一見強引に思える彼の振る舞いだが、そこにはレティシアへの真っ直ぐすぎる愛情が隠されている。この甘くも激しい愛の表現が、クラークをただの「王道的王子様」から、唯一無二のキャラクターへと昇華させている。
笑いを誘うシーンと、王道ラブコメらしい甘い展開が交互に訪れ、テンポの良さは飽きることがない。爽快感と胸キュンが詰まった本作を、ぜひ手に取ってみてほしい。
文=ネゴト / すずかん
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