幼い自分を虐げた祖父が亡くなった。“ややこしい家族”のもとに帰郷した主人公の複雑な胸中【書評】

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家族の形はさまざまで、それぞれに事情がある。時には価値観の違いに苛立ち、距離を置きたくなる瞬間もあるだろう。それでも、ふとしたときに思い出す温かさや小さな気遣いは、離れてもなお心に残り続けるもの。面倒な一面やわずらわしさも含め、家族という関係は私たちにとってかけがえのないものなのだ。
『しくじり家族』(五十嵐大:原作、さく兵衛:作画/KADOKAWA)は、そんな一例をリアリティ豊かに描く。本作は、映画「ぼくが生きてる、ふたつの世界」のモデルとしても注目された著者の原点となるエッセイ(CCCメディアハウス)のコミカライズだ。実体験をもとに描かれた物語は、読み手に家族の絆の尊さを再認識させてくれる。
主人公・大は、耳の聴こえない両親、宗教に傾倒する祖母、暴力的な元ヤクザの祖父のもとで育った青年。複雑な家庭環境に嫌気がさし、大人になると逃げるように上京した。しかしある日、祖父の危篤を知らされ、久しぶりに帰省することに。