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期待の新人作家おどるが描く社交ダンスBL! 『春のデジャヴに踊れ』で描かれる令和の100%じゃない恋

  • 平日の夜、仕事を終えたら何をする? どんな趣味があると人生は幸福だろう。


    『春のデジャブに踊れ』は大人の社交場・社交ダンススタジオで、大学生と銀行勤務のアラサー社会人が出会う、春めく歳の差ボーイズラブだ。


    社交ダンスといえば過去にも映画『Shall we ダンス?』が大ヒットし、芸能人がテレビ番組で大会に出場したりと、今も昔も細く長く愛されている。今年は社交ダンスBLの大型実写化が話題になりそうだが、一足早く、期待の社交ダンスBLのコミックスが発売された。


    リアルに描かれた圧巻のダンスシーン。


    体の動きが画面から伝わってくる。


    著者はおどる。確かな画力と丁寧な心理描写が光る、期待の新人作家だ。


    物語は、大学生の晃介が亡き母のダンススタジオを久々に訪れるところから始まる。人生に悩む彼の前に現れたのは、仕事をしながら社交ダンスを嗜む社会人の淳。彼が手を差し伸べたことで、ふたりの心の距離は急速に縮まっていく。


    本作の見どころは、彼らが日常に溶け込んでいても不思議ではないと思うほどの、等身大で丁寧に綴られた心模様だ。歳の差だけではない、社会的立場や性的指向・性自認など、他者との違いを話し合い、理解しながら関係を築いていく。その姿が令和らしく爽やかで、愛おしくなる。日本のBL作品には珍しく、人間讃歌を描くことに果敢に挑んでいる。

    悩む就活生へ、大人の先輩が人生相談に答える。


    等身大の恋愛観。大人ならわかってしまう恋の匙加減。


    そして、淳が晃介の母を好きだったのでは、という驚きの展開が用意されている。


    晃介の母はかつて淳のダンスの先生だった。晃介は淳への恋心を自覚した途端、母がライバルかもしれないという事態に陥る。


    果たして淳は晃介の母と秘密の関係があったのか?


    関係が進展しても、社会が彼らに必ずしもウェルカムというわけではない。


    教師を目指す晃介は生徒の目やSNSの拡散を気にしなければならないし、ふたりは外では人目を気にして“一度も触れずに”過ごすことを選ぶのだ。マジョリティでは味わいにくい切なさや社会の課題まで、本作では柔らかな視点で描いている。


    現代社会で同性同士が探り探り、心を寄せていく姿が描かれる。


    社交ダンスの素晴らしさや繊細な心の機微だけではなく、BLとしてもサービスが満載の『春のデジャブに踊れ』。もうすぐ訪れる春のひとときを、この作品と過ごしてみるのはいかがだろう。


    あなたも一緒に踊り出したくなるかもしれない。


    『春のデジャヴに踊れ』 (おどる/KADOKAWA)

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