恋愛ものの名手・田中メカ新作は夜世界のお仕事もの『不夜城のステラ』【書評】

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「少女マンガ=恋愛マンガ」というイメージは根強い。もちろん恋愛を描く作品が多いのは事実だが、ちょっと触れている人なら少女マンガが恋愛だけじゃないのもわかるだろう。そして、恋愛軸でなくても少女マンガらしい魅力を感じさせてくれたりする。
田中メカ氏の新作『不夜城のステラ』(白泉社)もそんな少女マンガのひとつだ。
田中メカ氏といえば、これまでの代表作はいずれも恋愛もの。だが、今作は従来とは手触りが違う。仏頂面で地味、だけど図抜けて優秀で、容姿も秘めた魅力を持っている主人公・皆川星(みながわ・せい)が、母の死をきっかけに夜の街の世界へ飛び込むという、ガールズ・サバイバル作品になっている。
誰もが見くびっている、未経験者のセイが夜の街でその才能を開花させていく姿は、彼女を見出したスカウトマン・射馬(いば)が語るように「皆が大好きなサクセスストーリー」の気持ちよさに満ちている。敵意むき出しの先輩たちの嫌がらせにも真っ向から立ち向かう負けん気の強さも清々しい。そんな骨組みは、少年マンガ的な熱さと言ってもいいだろう。