見た目も家庭環境も正反対な、2組の子持ち夫婦。幸せな家庭は、そして最後に崩壊する家庭は一体どっち?【書評】

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「人の不幸は蜜の味」とはよく言ったもの。とはいえ、現実世界で泥沼劇に巻き込まれるのは御免だが、ストレスなく楽しめるのがフィクションならではの大きなメリットだろう。
『どちらかの家庭が崩壊する漫画』(横山了一/KADOKAWA)は、「リアルすぎて怖い」とSNSで話題となった、ファミリーサスペンス漫画だ。
本作で描かれるのは、子どもを持つ2組の夫婦の暮らし。エリートサラリーマンの夫を持つ薬師寺家と、無職でガラの悪い風体をした夫を持つ毒山家。タイトルどおり「どちらかの家庭が崩壊していく」様と、そこに関わるもう1組の夫婦、という形で物語のストーリーは展開していく。
バリバリ働く夫を専業主婦として子育て中の妻が支える、という関係の薬師寺家は、それだけを見れば非常にありふれていて、ともすれば生活の安定した“普通の幸せ”に生きる夫婦のようにも思える。
一方の毒山家は生まれたばかりの子どもを抱えながらも、夫は無職かつパチンコ三昧。就職しようにもどの仕事もなかなか長く続かず、結果として妻の方が働きに出て、主夫が家事育児を主に担当していた。