【2025年本屋大賞ノミネート作レビュー】主人公は高校球児の母。球児の親を縛る「父母会心得」、監督への“賄賂”もどきも!?――早見和真『アルプス席の母』

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『アルプス席の母』(早見和真/小学館)は、高校球児の母親が主人公という、新しい視点の野球小説だ。
事故で夫を亡くし、女手ひとつで息子を育てる奈々子は、中学3年生の航太郎の進学で悩んでいた。投手として才能あふれる航太郎が目指すのは甲子園。進学を希望しているのは、大阪の強豪校・山藤学園だ。
しかし神奈川で暮らす航太郎には伝手もなく、また運良く山藤の監督と話す機会を得たものの、先方の興味は全くない様子。
結局航太郎は、同じく大阪にある歴史は浅いが特待生として受け入れてくれる希望学園高等学校の野球部に入り、寮生活が始まる。
奈々子も、「打倒山藤」「甲子園出場」「高卒でプロ」という息子の夢を見守るため、高校の近くに住み、慣れない環境で新生活を始める。だが、大阪人の「半歩近い」距離感に困惑する彼女に、更なる「新文化」が襲い掛かる。
高校球児の親たちの集まり「父母会」だ。
十数ページにもわたるという「父母会心得」に縛られ、高校球児並みの「規律」と「体育会系の厳しさ」が、親にも求められることを知った奈々子。