「子育て中に助けられた人ランキング」を作るとすれば、その上位には、間違いなく「アンパンマン」とその生みの親・やなせたかしさんがランクインする。少なくとも私はそうだし、きっと世の中の多くの親たちにとってそうではないだろうか。今期の朝の連続テレビ小説「あんぱん」は、そんなやなせたかしさんとその妻・暢さんをモデルとした物語らしいが、一体どんな内容なのだろう。「アンパンマン」には慣れ親しんでいるが、よくよく考えてみれば、やなせさんについてはほとんど何も知らない。
そこで手に取った『愛の人 やなせたかし』(小手鞠るい/講談社文庫)を読んで驚いた。その才能の豊かさと愛情深さに圧倒されてしまった。この本はやなせさんの愛弟子が、恩師との日々を綴った作品。やなせさんというと、「アンパンマン」のイメージばかりが強いが、彼が漫画家、絵本作家であると同時に、詩人だったことをご存じだろうか。かくいう私は、やなせさんが「アンパンマンマーチ」をはじめとするアンパンマン関連の歌や、童謡「手のひらを太陽に」の作詞を担当されていたことは何となく知っていたが、やなせさんが詩人だということは知らなかった。だが、この本を読んで一気にファンになってしまった。やなせさんの数々の名詩とともにその人生が綴られたこの本を読むと、胸にじんわり熱いものが込み上げてくる。