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吾輩はJKである? 主役は女子高生に転生した夏目漱石。文豪JKの日常はアカデミックでユーモアにあふれてる!【書評】

  • 「夏目漱石」その名は有名だとしても、その人物像を深く理解している人は少ないのではないだろうか。知的かつユーモラスな学園コメディ『JK漱石』(香日ゆら/KADOKAWA)を読めば、夏目漱石という文豪についてもっと知りたくなるかもしれない。


    入試トップの優秀な女子高生の正体は、没後百年を経て転生した文豪・夏目漱石で…というユニークな設定の本作。現代日本に再び生を受けた漱石は、女子高生・朝日奈璃音として生活している。


    前世では長い闘病生活の末に亡くなった経験から、今生では「ストレスなく健康に生きよう」と強く決意するも、その類まれなる才能と個性から再び周囲の注目を集めることになるのだった。


    漱石通の男子と文学談義に花を咲かせれば、恋仲であると勘違いされたり、現代のスイーツにときめいたり、同じ文豪仲間の人生にショックを受けたり…。現代は予想できないことの連続だ。女子高生×文豪という二面性を持つ璃音の行動は魅力的で目が離せない。さらに文豪ならではのアクシデントへの対処法も、実に興味深いのである。

    本作の魅力は、堅苦しいイメージだった「文豪」という存在に、私たちと同じ喜怒哀楽があったことに気づかせてくれる点にある。時代は違えど、友情や恋愛に悩み、人生を模索していた生身の人間。そんな当たり前だけれど見落としがちな事実を、コミカルに、時に切なく描き出している。香日ゆら氏の軽やかな筆致も、「文豪」のイメージ変化に一役買っているように思う。


    「名前は知っているけれど、夏目漱石の作品はあまり読んだことがない」そんな人にとって本作は、読書への入り口になるかもしれない。偉人をより身近に感じ、物語の奥深さに触れるきっかけになるだろう。


    本作を通して得た文豪・夏目漱石への親しみは、彼の作品への新たな視点をもたらしてくれるはずだ。


    文=ネゴト / くるみ

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