村上春樹が推す米作家20年ぶりの新作! 虚言ばかりで犯罪者となった中年男の逃亡劇の果てに待つもの

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SNSなどで広まる嘘や虚言、偽情報、プロパガンダ、そしてフェイクニュース──しかしそれらは今に始まったことではない。『旧約聖書』の「創世記」には弟のアベルを殺した兄のカインが、創造主ヤハウェからアベルの行方を問われて嘘をつく場面があり、『ギリシャ神話』にはギリシャ人がトロイア人を欺いて国を滅亡させた「トロイの木馬」のエピソードがある。ところが現代は昔と比べて嘘が広まるスピードが異常に速く、あっという間に世界中へ広まり、人々の生活や政治、国際的な問題にまで瞬時に影響を及ぼすようになった。さらに近年嘘は人の口に乗るだけではなく、アルゴリズムやAI(人工知能)学習によって拡散されるケースも増えており、「いったい何が嘘なのか?」を見極めることが非常に難しくなってきている。
そんな時代を描き出したのが、アメリカの作家ティム・オブライエンの20年ぶりの小説『虚言の国 アメリカ・ファンタスティカ』だ。2023年に発表された600ページ超の本作を訳したのは、これまでオブライエンの『ニュークリア・エイジ』『本当の戦争の話をしよう』『世界のすべての七月』などの翻訳を手掛けてきた小説家の村上春樹だ。