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他人が当たり前に持っているものを生まれつき得られなかった人間にとって、人生は常に戦いの連続だ。周囲の人々のように物事がスムーズに進むことは少なく、日常はいつだって、途方もない数の悩みと苦難に埋め尽くされている。『133cmの景色』(ひるのつき子/新潮社)は、まさしくそんな一例をリアリティ豊かに描いた物語である。


主人公・吉乃華は、食品会社に勤務する25歳。小学生の頃、病気の影響で身体の成長が止まった華は、当時の身長のまま大人になった。当初は自身の症状を気にせず朗らかに過ごしていた華だったが、成長とともに周囲からは“同世代”扱いをされなくなり、年齢と外見の乖離にひそかに苦しむようになる。


社会人になった現在も、彼女が直面する現実の厳しさは変わらない。他社に赴けば、先方には小学生の校外学習か何かなのかと誤解されるはめに。気合いを入れて参加した合コンは敗戦続き。仕事の打ち合わせでは、飲酒絡みの案件となると、担当責任者であるにもかかわらずまったく相手にされなくなる。


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