摂食障害となり精神科病棟に入院することになった女子高生が、閉ざされた空間の中で“生きること”と向き合っていくセミフィクション『精神科病棟の青春 あるいは高校時代の特別な1年間について』(もつお/KADOKAWA)。
スマホもテレビも禁止、面会すら許されない特殊な環境の中で、それでも少女の心は前へと進んでいく。
精神科病棟と聞くと、閉鎖的で重苦しいイメージを抱く人も多いだろう。そこにはたしかに苦悩があり、孤独がある。だが本作では、精神科病棟を“ただ苦しいだけの場所”として描かない。そこには悩みを分かち合い、互いを見守る優しさが満ちているのだ。
主人公のミモリは、体重わずか33kg。極端な食事制限から摂食障害となった女子高生だ。彼女が精神科病棟の中で少しずつ周囲とつながっていく過程は、まるで青春映画のようにまぶしい。傷を抱えた者同士だからこそ生まれるつながりが、この作品には静かに、けれど力強く描かれている。