「天才」と言えば聞こえはいいが、突き抜けた才能は、ときにその人自身を傷つけることもあるのかもしれない。さもえど太郎氏が描く『Artiste(アルティスト)』(新潮社)を読みながら思った。そこには、才能に恵まれながらも、少し不器用な芸術家たちが数多く登場する。
パリのとあるレストランの皿洗いとして働く気弱な青年ジルベールは、元々は有名な高級レストランで働いていた。しかし、転職した今のレストランで、とある誤解から料理長とトラブルを起こし、皿洗いに降格。彼に落ち度はなかったが、彼はそれを受け入れていた。そんな彼のもとに、雑用係で新入りのマルコがやってくる。マイペースで遠慮がなく、ジルベールとは正反対の性格。そんなマルコは、一緒に働くうちに、ジルベールの類稀なる才能に気づく。