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大切にしていたはずの宝物や、それらに抱いていた愛着。大人になるにつれて手放してきた“なにか”を、日々の中でふと懐かしく思い出す瞬間はないだろうか。


『つくも神の弔い処』(七星/KADOKAWA)は、“忘れ去られた物たち”の最期の願いにそっと寄り添う物語だ。


付喪神(つくもがみ)とは、長い年月を経た物たちに宿った神々のこと。人間に捨てられ、壊され、怨みを抱き怪異と化した彼らは、「弔い処」へやってくる。弔い処では、跡取り息子・宗介と神の従者である斎(いつき)が付喪神の最期の願いを成就させていく。


付喪神たちの想いは、「愛されたかった」「また会いたかった」といった失われた時間や届かなかった気持ちへの未練だ。それらは人間が抱く後悔の念と変わらない。本作は付喪神の姿を借りながら、誰の心の中にもある“報われなかった感情”を描いているのである。


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