子どもの頃に読んだ童話。登場するプリンセスや森の中のお菓子の家など、メルヘンな世界観に憧れた時期は、きっと誰にでもあるはずだ。そんな幻想を痛快に裏切ってくるのが『しゃーなしやぞ』(西造/KADOKAWA)。童話をベースにアレンジされた、個性的すぎるキャラクターたちが登場する作品だ。想像を超えるような言動に、笑いがこぼれてしまうだろう。
本作に登場するのは「シンデレラ」や「ヘンゼルとグレーテル」など、5つの有名な童話。しかし、登場するキャラクターたちは原作とはまるで別人。たとえばシンデレラ。原作では清貧ながらも心優しく、意地悪な継母によって舞踏会に行けない不憫な存在として描かれる。だが本作の彼女は、食への執着があまりにも強いキャラクター。ドレスを着ることより、ご飯をたらふく食べたいがために置いて行かれるのだ。舞踏会を諦めた後も、ひとりでポテチパーティーを開いて楽しんでしまう自由さには、脱帽するほかない。