人は弱っているときほど、他者の善意に強く反応しやすい。閉塞感のある環境に置かれ、孤独や不安を感じやすくなっているときに優しく接してくれる相手の存在は何よりの心の支えとなる。時には絶望の中の唯一の希望のように感じられることさえあるのだ。
『水曜午後2時の恋人 寂しさにつける薬はありますか?』(三松真由美:原作、Hilo:漫画/KADOKAWA)は、暗澹たる気持ちで日々を過ごしていた主人公の揺れ動く心や危うい感情の流れを繊細に描いた作品だ。
主人公・香緒は、夫・剛留と結婚して10年。子どもは自然に授からず諦めたが、夫・剛留とのスキンシップのため、月に一度の夫婦の日を設けていた。しかしそれも、今や短時間で済ませる形式的なものとなり、心はすれ違うばかり。共働きでありながら家事を一切しない夫、何かと香緒に厳しく当たる義姉――香緒の生活は息苦しさに満ちていた。