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不登校の子どもは年々増加している。小学生では50人に1人、中学生では15人に1人が不登校とされ、別室登校やフリースクール通学者を含めれば、その割合はさらに上昇する。


学校は、本来子どもが人として成長するための“社会”に出会う環境である。その学びを妨げる不登校は、いまや個人や家庭だけの課題ではなく、社会全体で向き合うべき構造的な問題となっている。


『不登校を克服する』(海野和夫/文藝春秋)は、不登校の実情と向き合い続けてきた著者が、心理職としての豊富な臨床経験と知見をもとに、不登校の理解と解決への道筋を丁寧に解き明かす一冊だ。


前半では、不登校の定義やタイプ、発生要因などを多角的に解説する。読者が最初に想起しがちな「いじめ」や「友人関係の不和」だけでなく、家族間の葛藤、学業不振、発達的な特性、経済状況なども扱っている。さらにはSNSによる誹謗中傷やゲーム依存といった現代的な要因にも触れており、不登校の全体像をつかみたい読者にとって、極めて示唆に富んだ内容だ。


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