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夏空に、きみと見た夢 飯田雪子/ハーパーBOOKS+


「彼が死ななければこの恋は始まらなかった」——そんな残酷な恋の物語にここまで切ない思いにさせられるとは思わなかった。その作品とは『夏空に、きみと見た夢』(飯田雪子/ハーパーBOOKS+)。10万人が涙した感動作を大幅改稿し復刊した名作だ。孤独感を抱える女子高生が出会った、ひと夏の奇跡。高校生のラブストーリーは数多くあるが、この物語は、かつて高校生だった大人たちも思わずウルッとくるに違いない。


主人公は、その「見た目のよさ」で一目置かれている高校三年生の悠里。そんな彼女は、ある日の放課後、他校の見知らぬ男子生徒に声をかけられる。またいつもの告白か、と断りの言葉を口にしようとした悠里だったが、意外なことに彼は、きみのことが好きだった広瀬天也(たかや)という男子の葬式に来てほしい、と告げる。土下座までして頼みこまれ、苦しまぎれに「バイトなら行く」と不謹慎な額をふっかけたものの、その金額を払うと言われしぶしぶ葬儀に参列することに。だが、その日から悠里の身の回りでは奇妙なことが起こり始める。誰もいないはずの場所から感じる視線、どこからともなく聞こえてくる途切れ途切れの声、無言電話……。まさか、広瀬天也の祟りなのだろうか。


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