「この本はどんな時どんな場所でも頑張りすぎるあなたのために書いたから」。
そんなまえがきから始まる『心の中で犬を抱きあげたあの日、自分に優しくなれた気がした』(フクダウニー/KADOKAWA)は、その言葉通り、疲れた心と身体を優しく撫でてくれるようなエッセイ集だ。noteで反響を呼んだ愛犬とのかけがえのない日々のエッセイを軸に、祖母や愛猫との思い出、“ままならない日常”への眼差しなどを綴った21編を収める。
著者のフクダウニーさんは介護福祉士として働いている。仕事で指針にしているのは、尊敬する元同僚が言った「介護の仕事はいかに面白がれるか、そこに懸かっていると思うんだよ」という言葉。これは、仕事に限らずフクダウニーさんの生きる姿勢そのものでもある。
「(妄想で)自分宛にハッピーエンドを用意し続ける練習を繰り返すのだ。しあわせなんか、報われることなんか自分には似合わないと決めつけないで」「人間よ大志を抱け、それでも駄目なら米を炊け」「泣きながらごはんを食べたことがある全員で、いつか本当に大丈夫になろうね」——フクダウニーさんが綴るユーモアと優しさがにじむ言葉の数々に共感したり励まされたりする。そして、それは傷つき涙を流した「あの日の自分」にかけてほしかった言葉として読む人の胸に響くだろう。