絵を描く、立体物を制作する、そして文章を書く。そんな創作活動に没頭することは、クリエイターではなくとも経験したことがある人は多いはずだ。創作意欲の源泉となるのは、心の深いところから湧き上がる“熱”である。その熱が創作者を内側から燃え立たせる。しかし、その熱は儚く冷めてしまうことがある。思ったような出来にならなかったり、期待した成果を得られなかったりすると、その熱は失われていく。
『あくたの死に際』(竹屋まり子/小学館)は、創作する熱を取り戻していく男の艱難辛苦を描いた物語である。
主人公の黒田マコトは、学生時代に文芸サークルに所属していたが、就職を機に創作活動から遠ざかっていた。しかし、30歳を過ぎて再び小説を書き始める。創作を通じて味わう喜びと苦しみ、そして自己と向き合う深い対話の描写が、読者の心を強く揺さぶる。