世間には、あらゆる「べき論」が蔓延している。社会人たるもの、母親たるもの、学生たるもの、かくあるべき、と。そんな世間の目に迎合する形で、周囲との摩擦を最小限に抑える。私は長らく、そのように生きてきた。だが、もし「世界の終焉」が明確に決まっていたら、私はこれまでと同じ生き方を続けるだろうか。
『#真相をお話しします』『難問の多い料理店』などで知られる、結城真一郎氏による新著『どうせ世界は終わるけど』(小学館)は、「100年後に人類が滅亡する」世界線で物語が進む。
ある日、直径22キロの小惑星が100年後にアメリカ大陸の西海岸付近に落下する、とのニュース速報が流れた。地球と小惑星が衝突した場合、人間どころか大多数の生物が絶滅を余儀なくされる。どうにか衝突を回避すべく、各国のあらゆる機関が対策に乗り出した。地球に迫りくる小惑星は、「ホープ」と名付けられた。言葉の通り、それは「希望」を意味する。地球規模の危機にあって、それまで内紛や戦争を繰り返してきた人類が手を取り合い、一致団結するチャンスである。そのように国家の要人が発言したことが、ホープの名前の由来だ。