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桃源暗鬼 1  漆原侑来/秋田書店


『桃太郎』といえば、日本人にとって最も馴染みのある昔話の一つだ。桃から生まれた勇敢な少年が、犬・猿・キジと共に鬼を退治する――そんな勧善懲悪の物語が、もし「正義とされていた桃太郎側こそが、真の“悪”だった」としたら?


『桃源暗鬼』(漆原侑来/秋田書店)は、この大胆な問いかけから始まる漫画だ。桃太郎の既存のイメージをひっくり返す形で、正義の曖昧さをダークファンタジーのような雰囲気であぶり出す。1巻では本作の世界観と、主人公の鬼としての覚醒が鮮烈に描写される。


本作の主人公・一ノ瀬四季は、ごく普通の高校生だった。しかし彼には“父親が鬼だった”という出生の秘密があった。本作の世界には桃太郎機関という、国家と結びついた「鬼を排除すること」を正義とした機関が存在しており、彼らは鬼の血を引く者たちを追い、暴力的に処分する。鬼の血を引く彼の日常はその桃太郎機関による突然の襲撃によって破壊される。四季を守るために父が死んだことをきっかけに、彼は鬼の血を引く者として覚醒、桃太郎機関と戦うことになる。


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