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寿々木君のていねいな生活 ふじもとゆうき / 白泉社


このご時世、「男らしく」「女らしく」なんて表現は死語になりつつあるが、それでもどこかで女性らしい振る舞いを意識している自分に気づいたり、日常的にメイクをしている男性に「珍しいな」と感じてしまったり、若々しい服装を着た高齢の女性を目で追ってしまったり、そういう自分に気づくたびに辟易とすることがある。自分の中に巣くった偏見や古い価値観というのは、簡単になくなるものではないのだ。


ふじもとゆうき著『寿々木君のていねいな生活』(白泉社)の主人公、寿々木薫も、まさにこういった視線や発言に傷ついてきたうちの一人だ。


高校生の薫は、身体も大きく、表情も強面。見た目こそ怖い印象を与えるが、彼自身の趣味は、手芸と料理とガーデニングで、日頃から家で植物を栽培し、お菓子を作り、愛する妹のお人形の服を作ってあげるという、なんとも素敵な暮らしぶりをしている。性格も穏やかで、引っ込み思案なところがある。そんな薫の“顔に似合わない”趣味や性格は中学時代に嘲笑の対象となり、ひどいいじめを受ける日々が続いた。


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