今年は梅雨がどこかに行ってしまったのか、夏の暑さの到来が異常なほど早い。この暑さに冷房は不可欠だが、電気代もあがっている昨今、なんとか工夫して涼感を得たいもの…というわけで、思わずゾッとする「怪談話」で一気に体温を下げるのはいかがだろう。このほど登場する怪談アンソロジー『怪異十三』(三津田信三:編/中央公論新社)は、ヴィンテージな「怪奇」の味わいが奥深い、極上の「ひんやり」を届けてくれる一冊だ。
本作はリアルとの地続き感のあるホラー作品で定評のある作家・三津田信三さんが「本当にぞっとした話」を厳選したというもの。実は三津田さんはホラー小説マニアとしても知られており、本作には古くは1881年の作品(「ねじけジャネット」ロバート・ルイス・スティーヴンスン)から2001年の作品(「茂助に関わる談合」菊地秀行)まで13編が集められている。今では手に入らない逸品から王道の古典作品までが集まった、「およそ20世紀の名作怪奇短編集」ともいえる珠玉の一冊で、物語に描かれた時代の風情も独特のひんやり感を醸し出す。