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  • 出版禁止 女優 真里亜 長江俊和 / 新潮社


    幽霊よりも、生きている人間のほうがよほど恐ろしい。善意の皮をかぶって人を貶め、涼しい顔をして他者の人生を奪う。そんな人間ばかりではないと知りながらも、そういう人間が一定数いるのもまた事実で、だから毎日あちらこちらでいろんな人が泣いている。


    長江俊和氏による新著『出版禁止 女優 真里亜』(新潮社)は、人間のおぞましい顔を緻密に描き出す。冒頭で描かれる人の“善き一面”が、のちに顕になる悪辣さをより際立たせている。


    ある事情から出版禁止となった書籍が、このたび刊行された。過去、なぜ出版が差し止められたのか、その理由が綴られたルポルタージュの三部構成で本書は編まれる。ルポルタージュの著者は、ライターの高柳みき子と、ジャーナリストの江崎康一郎。本書は一貫して、女優の筧真里亜の足跡を追っている。無名ながら演技の実力は確かな真里亜は、長い下積みを経て、映画「殺す理由」の主役に抜擢された。この映画は、現実に起きた「首都圏連続絞殺魔事件」をモチーフとしている。犯人の平山純子は、昼は一般企業で真面目に働き、夜は繁華街で売春を行っていた。交渉が成立した男とホテルに連れ立ち、行為の最中に殺人に及ぶ。同様の手口で、純子は計6名の命を奪った。


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