“モダンガール”はおしゃれで異端で最先端。当時、婦女子のなかでも尖った存在だった。尖った先端は、時代の膜に突き刺さり、小さくも因習に風穴を開ける。
『東京ステッキガール』(伊田チヨ子/講談社)は、モダンガール(モガ)たちが都会を闊歩した昭和初期のお話 。名家のお嬢様の葉子(ようこ)に仕える女中・みちは、葉子の婚約が決まったと大喜び。だが、その陰で自分が婚約相手の妾にされてしまうかもしれないと知り、ある決意をする。
それは、男性のステッキ代わりに連れ添い、銀座の街をガイドする「ステッキガール 」として働くこと。時に愛人めいた役割さえ担う仕事だ。
女中をやめ、まとめ髪と和装を脱ぎ捨て、断髪のモガに変身したみちは銀座の路上に立つ。銀座に詳しくても世間知らず。仕事がなく、騙され、波乱な職業婦人ライフの始まりだ。