『くますけと一緒に(中公文庫)』(新井素子/中央公論新社)は、不穏さで疑心暗鬼になりそうな「怖い物語」だ。一方で、キュートかつファンタジックな雰囲気を漂わせているという、なんとも不可思議な小説である。
小学四年生の成美(なるみ)のパパとママは、交通事故で死んだ。
成美は哀しくない。それよりも、大親友の「くますけ」が原因で二人は死んだのかもしれないと、悩む。くますけは成美が小さい頃から一緒にいるぬいぐるみで、いつも自分を支え愛してくれた存在だ。もちろん、おしゃべりだってできる。
ある時、成美は葉子(ようこ)ちゃんにひどくいじめられ、葉子ちゃんを「死んだ方がいい」と呪ってしまう。その成美の気持ちを汲んだのか、どうやらくますけが葉子ちゃんを交通事故に遭わせたらしい。