人を「わかった」と思った瞬間、その人をひとつの枠に押し込めてしまうことはないだろうか。血液型やMBTIといった性格診断に始まり、「発達障害」や「双極性障害」といった病名まで、私たちはつい、相手の全体像をラベルで把握したような気になってしまう。友人から人混みが苦手だと聞けば、お祭りに誘うことは控えようと思う。それは思いやりでもあるけれど、相手の持つ「苦手」の中身に目を向けることなく、イメージだけで距離をとってしまっているのかもしれない。
碧月はるさんによる『いつかみんなでごはんを 解離性同一性障害者の日常』(柏書房)は、解離性同一性障害と共に生きる著者のエッセイ集である。解離性同一性障害とは、過去の強いトラウマやストレス体験などを背景に、ひとつの体の中に複数の人格が現れる障害である。このエッセイは、「病名や障害名で一括りにされがちな当事者のレッテルをはがす一助」となることを願って著された。