※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2025年9月号からの転載です。
忘れてしまいたいのに、もう何年も会っていないのに、ふとした瞬間に思い浮かべてしまう。『ギプス』の主人公・朔子にとって、その相手は13年前に別れた元同級生のあさひだ。前作『未知生さん』で注目を集めた片島麦子さんの新作は、10代の友情の痛みが真正面から描かれている。
「女性同士の友情を書かなければと思いつつ、これまではずっと避けてきました。大人の女性同士の友情を作品に出したことはありますが、学生時代を絡めたものまではまだ描いていなかった。それに10代の私は、家族とも友達ともあまりうまくいっていない不機嫌な子どもだったので、そんな自分の感覚が伝わるだろうかという心配もありました」
だが、少女期の感覚を共有できる編集者と出会ったことで、避けてきたテーマに挑むことを決める。
「『未知生さん』を読んで依頼してくれた編集者との最初の打ち合わせで、彼女とならこの感覚を分かり合えると思えたんですね。私は作品テーマと編集者にも相性があると思っているので、このタイミングで挑戦してみよう、と」
親友になりそこねた二人と、傷を負ったその後の人生
契約社員の間宮朔子が勤めるブックカフェに、痛々しいギプス姿で騒ぎ立てる見知らぬ女性が突然現れた。かつて朔子のクラスメイトだった葛原あさひの姉と名乗る彼女は、「あさひがいなくなった。親友のあなたなら行方を知らない?」と朔子を問い詰める。もう友達ではないから知らないと拒む朔子だったが、半ば巻き込まれるようにあさひの行方を探すことになる。