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『きみを愛ちゃん』(最果タヒ/集英社)第2回【全6回】


アニメやドラマに登場するキャラクターを高い熱量で愛し、生身の人以上に心を動かされことはないだろうか。本書は、中原中也賞や萩原朔太郎賞など数々の賞を受賞した詩人・最果タヒ氏が、さまざまなジャンルの32のキャラクターたちへ綴ったラブレターをまとめたもの。漫画から宝塚、アニメ、ドラマに童話まで、古今東西のキャラクターへの「愛」を磨き上げた、まるで宝石箱のようなエッセイ『きみを愛ちゃん』。その一部を抜粋してお届けします。


『きみを愛ちゃん』 (最果タヒ/集英社)


ところで、スターって、本当に生まれつきスターなのだろうか? それは「天才」にも言えることだけど、人がそう呼ぶから「スター」としてその人は生きるようになるのではないか、とも思う。才能に恵まれ、カリスマ性を持つ「スター」。それは周囲の人間や、ファンが作るものなのかもしれない。あなたはスターだ、とファンが信じるときに見ている幻や夢を守るために、その人は本当に「スター」になっていく。そしてきっと、ファンも周囲も、その人が本当は生身の人間であることを忘れているわけではない。夢や幻に理想や都合のいい誤解が混ざっている自覚はほんのりある。でも、夢が見たくてそう言うのだ。夢を信じたくて、スターであることを望んで、その人を讃えるんだ。


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