この夏、一本の青春映画『この夏の星を見る』が静かな盛り上がりを見せている。テレビプロデューサーの佐久間宣行氏からロックバンドBase Ball Bearの小出祐介氏まで、感度の高いクリエイターからの反応も熱い。監督の山元 環はこれが商業長編デビュー作となる新人ながら、ネクストブレイクの若いキャスト陣の輝きとともに、反響は壮大な星空のように広がり続けている。そんな同作に共鳴した一人が、11月に4年ぶりの新作となる『果てしなきスカーレット』の公開を控える細田 守監督だ。自身も19年前に劇場版アニメーション映画『時をかける少女』(原作・筒井康隆/脚本・奥寺佐渡子)で高校生の青春を描き、このほど自らノベライズした小説「時をかける少女 A Novel based on the Animated Film」も出版。フィルモグラフィーの初期に青春ものを刻んだ二人の監督が、アニメと実写の垣根を超えて、映画の可能性を語り合った。
暗くなければ星は見えない――実写で星空を描くかつてない試み
――細田監督は映画館で『この夏の星を見る』をご覧になったそうですね。
細田守さん(以下、細田):僕が初めて監督をつとめた『劇場版デジモンアドベンチャー』(99)から付き合いのある東映アニメーションのCGプロデューサーが、ぜひ観てくださいとムビチケを送ってくれたんです。同じ時期に別の知り合いからも、この映画がとてもよかったという話を聞いていて、観に行ってみたら非常によかった。そこから今日のこの場につながったわけです。
山元環さん(以下、山元):ありがとうございます! まさか細田監督が観てくださるとは思っていなかったので、本当に嬉しかったです。
細田:僕は東映アニメーションの出身なんですけど、『この夏の星を見る』(以下、『この星』)は、いわゆる東映の映画っていう感じが全然しないよね。かつてのある種の東映の映画には、激しくて熱っぽい、今の時代で言えば、コンプライアンスに抵触しかねないぐらいの、それこそがエンタメであるとするような傾向が強くあったと思うんです。東映時代の僕はそこにけっこう反発があったんだけど、一方でその影響下にもあることは自覚していて、愛憎相半ばするところがあるわけですよ。そんな僕がね、『この星』を観たときに、そうした東映らしい遺伝子を欠片も感じなかったんです。
山元:僕は東映で映画を作らせていただくことはもちろん、商業映画を監督すること自体も初めてだったので、東映らしい色合いというものを意識する余裕もなかったというのが正しいかもしれません。
細田:もともとは自主制作から?
山元:はい、完全に野良から自力で上がってきました。
細田:僕も学生時代は自主アニメを作っていて、それを観た東映アニメのプロデューサーが声をかけてくれたのがきっかけだったから、似たようなものかもしれませんね。だけど『この星』は自主制作らしい匂いが一切しないですよね。これが自主制作のノリの延長だとか言われたら、むしろ今の自主制作ってどれだけクオリティが高いんだ!? と言いたくなるぐらいの完成度ですね。
山元:昔から人に“伝わる”作品がずっと好きだったので、どうしたら一人でも多くの人に伝えられるかをとにかく考え抜きました。実写でコロナ禍を描く上では、リアルな現実の重みがある中にも、VFXを使ったカットではアニメーション的なポップさを感じられるような描写を心がけたり。