棲み処としている賃貸アパートの他、別にマンションの一角を間借りしている。
そこは某制作会社の1拠点であるが、私は家賃を支払い音楽労働専用のスタジオとして使わせてもらっている。
借りて何年になるか正確にはわからぬが、覚えている限り運営会社は2度変わり看板もボスもその都度変わった。
仕事がなくアルバイトで生計を立てていた時分も、今のように半ば趣味の延長のように音楽を作っていても、賃料さえ払えば嫌な顔ひとつせずスタジオとして使えるのだから有難い。
数年前の困窮具合は目を覆いたくなる程に酷く、朝拵えた塩だけの握り飯を持ってはスタジオに通い、せこせこと世に出ることはない曲を作り続けた。
コンペは通らず、日に日に貯蓄は減っていく。
機材の一切を売り払いスタジオを抜けようと何度も考えた。