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8番出口 川村元気/水鈴社


ゲームクリエイターのKOTAKE CREATE氏が2023年に発表し、現在に至るまで累計販売本数190万超を記録した世界的ヒットゲーム「8番出口」が、川村元気氏(『君の名は。』『怪物』企画・プロデュース、『百花』原作・監督・脚本ほか)によって映画化&小説化された。無限ループする地下通路に迷い込んでしまった男が、脱出の糸口を探すミステリーであり、世界三大映画祭のひとつであるカンヌ国際映画祭での上映に続き、アカデミー賞に輝いた『パラサイト 半地下の家族』『ANORA アノーラ』の映画製作・配給会社NEONによる北米配給が決定済みの話題作。本稿では映画版・小説版を比較しつつ、両形態から導き出される『8番出口』の魅力に迫ってみたい。核心的なネタバレはないため、ご安心を。


前提としてこの2作はゲーム「8番出口」から生まれたものであり、相互補完関係にあると言っていい。例えば映画版・小説版ともに「主人公の“ぼく”(二宮和也:演)が電車を降りてある女性(小松菜奈:演)と通話しながら歩いているうちに迷宮に迷い込む」導入は同じ だが、映画と小説それぞれの得意分野や形態の違いを活かした微妙な差異が仕掛けられており、両方をインプットすることで物語や心情がより立体的に立ち上がってくる。


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