※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2025年11月号からの転載です。
本屋大賞候補作家、待望の新作はクローズドサークルものだ。
鮎川哲也賞を受賞した山口未桜のデビュー作『禁忌の子』は2025年の本屋大賞最終候補に選ばれるなど、ミステリーというジャンルを超えたヒット作となった。その注目作家の第二作がいよいよ登場する。『白魔の檻』は北海道の過疎地にある更冠病院を舞台とする物語だ。第一作では旧友が巻き込まれた事件を解決した医師・城崎響介が、今度は濃霧と有毒ガス発生によって孤立した病院内での謎解きに挑む。
「『白魔(ルビ:びゃくま)の檻』は、『禁忌の子』を鮎川哲也賞に応募している間、それが落選したら次に出そう、と思って書き始めていた作品でした。私は北海道の病院で勤務していたことがありまして、そのときの体験を参考にした部分があります。過疎地の病院を舞台にした作品はいつか書いてみたいとずっと思っていました。そうしたところから出発したこともあって、結果として前作とはまったく違う話になったのだと思います。『禁忌の子』は、自分と瓜二つの溺死体が見つかる、というイメージが最初にあり、そこから作っていったお話です。今度はパニック的なシチュエーションが次々に起こるというのが土台にある着想で、同じことをやってもつまらない、という思いはありました」
探偵役である城崎響介の相棒役は、『禁忌の子』では旧友である医師の武田航が務めたが、本作では更冠病院にやってきた研修医の春田芽衣がその役に就く。大きな変更点だ。