『ハウスメイド』(著:フリーダ・マクファデン、訳:高橋知子/早川書房)は、ある家に住み込みで働くことになった主人公を待ち受ける謎と恐怖を描いた、ミステリー長編である。全米200万部の大ヒットを記録した本作は、日本でも発売直後から注目を集めている。
前科持ちの主人公・ミリーの職探しは難航していたが、住み込みで働くハウスメイドの面接に受かる。その豪邸には、精神状態が安定しない美しい妻と、一筋縄ではいかない一人娘、そんな二人のケアに努める温厚で誠実な夫の三人が暮らしていた。ミリーは屋根裏の小部屋を住まいとして与えられるが、小さな窓は開けられず、外から鍵がかけられる仕様に違和感を覚える。それでもようやくありつけた仕事だからと、彼女は一生懸命に働くが……。
本作最大の魅力は、読者を翻弄するどんでん返しにある。その仕掛けには、感情の流れや予想を計算づくで操るような精緻さがある。家庭内の秘密を明かす存在として、外部から雇われたメイドが活躍する作品は他にいくつも思いつく。が、あらすじを読んでそれらを思い浮かべた方には、類似の作品だと侮ることなかれ、とお伝えしたい。