
夢に破れ、長いあいだ立ち止まってしまった人は、再び歩き出せるのか。『再生のウズメ』(天堂きりん/祥伝社)は、そんな問いに優しく答えてくれる物語だ。
本作の主人公は、元子役の40歳・田村ウズメ。28歳のときに役者を諦め、結婚もせず、働きもせず、実家の部屋に12年間引きこもり続けていた。同級生が自立して家庭を持つ中、どう変わればいいのかも分からず、自堕落な日々を送っている。そんなウズメを見かねた母は、「便利屋」を呼ぶことにした。彼女の汚部屋を片付けにきた便利屋のスタッフ・興梠(コオロギ)は、演技経験のあるウズメを「代行スタッフ」としてスカウトする。そこで働くことで、ウズメの人生が新たに動き出していく。
人生を懸けて突き進んできた夢や理想が叶わず挫折したとき、気持ちはきっと折れてしまうだろう。ウズメも同じように心折れてしまった人物だ。夢破れた悔しさや、周囲との比較から生まれる焦り、行動したいのに動けない自分への苛立ち。彼女の姿はどこまでも人間臭く、リアルだ。完璧な主人公ではないからこそ、読者はウズメに自分自身を重ね、共感しながら読み進めることができる。