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心身が疲れたとき、美味しい食べ物はお腹も心も満たしてくれる。『弁当屋さんのおもてなし1』(十峯なるせ:漫画、喜多みどり:原作/KADOKAWA)は、食べ物が人の心を癒す力を優しく描いた作品だ。テレビドラマ化で話題を集め、9月8日には第3巻が発売されたばかり。読めばきっと美味しいご飯が食べたくなる、そんな一冊だ。


物語の主人公はOLの千春。恋人に二股をかけられ、心に深い傷を抱えたまま北海道・札幌に転勤する。新しい土地で孤独を抱えながら働く千春は、ある日、路地裏の弁当屋「くま弁」に足を踏み入れる。店員のユウが差し出したのは、千春が注文したものとは違う弁当だった。戸惑いながらも口にした瞬間、頑なに固まっていた心が少しずつ解けていく。


千春に差し出されたのは「鮭かま弁当」。どうして鮭かまだったのか、その理由はぜひ物語を読んで確かめてほしい。そこには、千春の心に静かに寄り添うユウの深い想いが込められており、胸が熱くなるはず。恋人に裏切られ、自分が何を求めているのか見失っていた千春にとって、この弁当は再生への小さな一歩となる。食事を通して少しずつ自分を取り戻していく千春の姿は、読者の背中もそっと押してくれる。


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