ダ・ヴィンチWeb


『Untitled Flowers ~卵を産まないわたしたち~1』(ISAKA/KADOKAWA)は、何者でもない自分のまま、自分らしく生きることを応援してくれる作品だ。読めばきっと“自分らしい幸せの形”に向き合ってみたくなるに違いない。


不妊の診断を受け、結婚や出産の道を歩まず生きる35歳の美和は、同居人のトランスジェンダー女性・茜とふたり暮らしをしていた。ある日のこと、美和は若くして亡くなったいとこの葬儀に出席する。そこで目の当たりにしたのは、母親を亡くした少女・杏と、彼女を誰が引き取るかで揉める親族たちの姿だった。美和は杏を自分たちの家に迎え入れることに決め、新たに3人の同居生活が始まる。


美和と茜は、互いにままならない身体を抱えて生きており、結婚して子どもを産み家庭を築くという人生を、諦めざるを得なかった。しかし、杏との出会いによって思いがけず、同じ屋根の下で誰かと共に過ごし、「ただいま」や「おかえり」を言い合える繋がりの温かさに触れることになる。それぞれに痛みや傷を抱えた3人の関係は、切なくも温かい。


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