
誰もが一度は、家庭や学校で「食べ物を残してはいけない」と言われた経験があるだろう。それは食への感謝を育むうえで大切な教えだ。しかし、それが行き過ぎてしまうと、「残さず食べること」への強すぎる義務感が、楽しいはずの食事の時間を苦しいものに変えてしまうこともある。
『外食がこわい 会食恐怖症だった私が笑顔で食べられるようになるまで』(なつめももこ/オーバーラップ)は、人と一緒に食事をすると強い不安や緊張に襲われ、うまく食事を摂れなくなってしまう“会食恐怖症”がテーマのコミックエッセイだ。ある日突然、人前で食事ができなくなった著者が、その症状と向き合った日々をこまやかに描いている。
著者の会食恐怖症の原因のひとつは、幼い頃に父親から「食べ物を残すな」と厳しく叱責されたトラウマだった。その記憶がふとしたきっかけで呼び起こされ、不安や恐怖に駆られる症状が現れてしまったのだ。それを克服するため、著者は「食べること」のみならず、自分自身の心や人生に向き合っていくことになる。