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コミックエッセイ『認知症の人、その本当の気持ち 意味わからん行動にも理由がある』(たっつん:原作、北川なつ:漫画/KADOKAWA)は、長年介護の現場で働いてきた現役介護士の実体験をもとに描かれたコミックエッセイだ。


う○ちを手渡してくる人、ズボンをかぶって徘徊する人、何度片付けても部屋を散らかしてしまう人……。著者は、そうした行為を問題行動として処理しない。「この人にはどんな理由があるのだろう」と一度立ち止まり、本人の世界にできる限り寄り添おうとする。認知症によって記憶や判断力は失われたとしても、感情は消えていない。その感情を手がかりに相手の行動を理解しようとする姿勢が、作品全体から温かく伝わってくる。


本書は介護士たちのチームワークも描かれる。原因を探り、状況を共有し、最善の対応を模索する。できることが減っていく本人の苦しみに寄り添い、ほんの小さな変化でもスタッフ全員で喜び合う。そのひとつひとつの場面に、人の尊厳を守る仕事の尊さがにじむ。


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