
幽体離脱に、AIロボット、幽霊、人工子宮、隕石落下、不可解な連続死、地球の根本原理……。一見、突拍子もない掛け合わせに思えるが、それらは思いがけない化学反応を惹き起こしていく。荒唐無稽な物語であるはずなのに、あながちありえないとも言い切れない。むしろ、読めば読むほど、もっともらしく思えてくる。近い将来こんな事態が訪れたとしてもおかしくはないような気がしてくる。
そんな不思議な小説が『ファウンテンブルーの魔人たち』(白石一文/新潮社)。愛と終末をめぐる超弩級のエンターテインメント小説だ。こんなにもぶっ飛んだ小説が他にあるだろうか。この本はSFであり、ミステリーであり、幻想小説であり、そして、未来を描いた予言の書のようでもある。一体、どこへ連れてかれるのやら。文庫で800ページ超というその分量に最初は戦いたが、本を開けば一瞬。先の展開が全く読めず、続きが気になってたまらず、貪るようにページをめくらされ続けた。