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  • ようやくカレッジに行きまして 光浦靖子/文藝春秋


    「留学してみたかったなぁ……」。歳を重ねるごとにそんな思いが胸を疼かせる。だが、「してみたかった」と過去形で捉える必要などないのかもしれない。留学に興味があるならば、一歩ふみだして、何歳からでも挑戦すればいい。


    そう実感させられるのが、『ようやくカレッジに行きまして』(光浦靖子/文藝春秋)。50歳で単身カナダへ移住した光浦靖子さんのエッセイ集だ。移住から1年後、光浦さんは2022年から2024年にかけて、カレッジ(日本でいう専門学校)のプロのシェフを育成するコースで学んだ。ページをめくればそこはカレッジ。国も年齢も違う生徒たちと時にぶつかり合い時に助け合う、50代の学生”ヤスコ”の奮闘劇にワクワクが止まらない。


    せっかくカナダに留学するならば、英語だけでなく、他にも何かひとつ身につけたい。それにカナダで働く経験もしてみたい。そんな光浦さんが見つけたこのカレッジは、カナダ出身のドメスティックの学生のほか、光浦さんのような海外からの留学生も通う。特に留学生向けのクラスは2年コースを卒業すると、3年のワーキングビザをもらうことができるのだ。だが、光浦さんの選んだプロの料理人を育成する2年コースは実にハード。最初の授業では「ハーイ、エブリワン」以降、シェフの英語が全く聞き取れないし、座学ではパソコンの使い方が分からず、課題の提出方法が分からない。実技が始まれば、朝の7時から午後2時まで月曜日から木曜日の週4日ほぼ立ちっぱなしで、とてつもない肉体的疲労だ。


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