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【怖い場面あり、苦手な人は閲覧注意!】


人と妖が交錯する世界を描いた『百鬼夜行抄』(今市子/朝日新聞出版)は、作者の繊細なタッチによって、幽玄で幻想的な世界観が静かに広がり、その奥深さに引き込まれる作品だ。


普通の人には見えないものが見えてしまう青年・飯嶋律。彼の側には青嵐という妖魔がおり、かつて「飯嶋蝸牛」という名で作家業をしていた律の祖父との契約により、律の亡き父の遺体に取り憑き、生活をしながら律を妖の危険から守っていた。


青嵐は蝸牛との契約により律を守っているものの、彼がすべてを解決するわけではない。物語には「人の命はいとも簡単に奪われる」という厳しさがあり、怪異への畏怖を呼び起こす。一方で、律の使い魔となる尾白・尾黒といったユニークなキャラクターたちが織りなすコミカルなやり取りもあり、「ホラー」一辺倒にならず、柔らかな読後感をもたらしてくれる。


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