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夏休み初日。14歳のホノカは目覚めたら自室ではなく、見知らぬ体育館にいた。周りには、自分と同じ年齢の少年少女が7人。そこへ妖精の着ぐるみをまとった謎の人物が現れ、彼らに告げる。


「キミたちにはこれから一本の劇を演じてもらいます」


その劇の題名は『いちばんうつくしい王冠』――。


デビュー作『擬傷の鳥はつかまらない』(新潮社)を皮切りに、数々の骨太エンタメ作品を発表してきた荻堂顕さん。『いちばんうつくしい王冠』(ポプラ社)は荻堂さんが「ぜひ十代の子に読んでもらいたい」と語る、初の青春ドラマです。本作に込めた思いや自身が十代だった頃、そして読者に届けたいことを伺いました。


――世にデスゲーム作品は数あれど、閉じ込められた場所から脱出するための条件が「劇を完成させること」という設定は、とても珍しいですね。着想のきっかけは何だったのでしょう。


荻堂顕さん(以下、荻堂):最初に担当編集者から、これまで僕が書いてきた作品とはちがう、若い読者を対象としたものを書いてほしいと依頼されました。ちょうどその頃、自分もティーンエイジャー向けの本を書きたいと思っていたので、ぜひ、と。さて、どんなのがいいだろうと考え、ポプラ社で十代向けの作品といえば、辻村深月さんの『かがみの孤城』が思い浮かんだんです。



――いじめや人間関係などに苦しむ少年少女たちが、鏡のなかの不思議な世界で冒険する物語ですね。


荻堂:小説には、“傷つけられた”側の物語が多くあります。改めて『かがみの孤城』を再読してみて、“傷つけられた”側の物語として完成していると感じました。なので、僕は別の視点の物語を書いてみたいと思ったんです。再読する中で、主人公をいじめる女の子や理解を示さない先生など、「加害者」のキャラクターに興味を持ちました。僕はよく“自分版の◯◯を書きたい”という思いから構想することが多いのですが、今回は自分版の『かがみの孤城』を書きたくなった。「鏡が開かない子たち」の話、つまり“傷つけた”側の子たちを主人公にしたものを。


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