
『血管年齢』(小林 順二郎/文藝春秋)は、心臓血管外科の医師が血管の健康維持について解説した一冊である。
人々が長く健康に生きるうえで、血管のケアは特に重要だ。とはいえ目には見えない部位なので、具体的にどうすればいいのか想像がつかない人も多いのではないだろうか。本書では、健やかな血管を維持するのに有効な生活習慣や食事について解説されており、すぐに実践しやすいノウハウが詰まっている。また、逆に血管をおろそかにするとどのようなリスクが増えるのかも知ることができる。
本書の冒頭で突きつけられるのは、「一度劣化した血管は元に戻らない」という厳しい現実だ。動脈硬化が進んだり、血管が狭くなってしまったりしたあと、たとえケアに努めても元の状態まで改善する可能性は低い。40年以上心臓外科医として働いてきた著者は、実際の手術でさまざまな血管を見てきたこと、そして弱った血管は手術をしづらいという本音を章末コラムで明かしている。そこに綴られた「血管を見れば、その人の人生がわかる」という言葉は、読者の胸に刺さるのではないだろうか。